螺子市

思い出したときに書く

殺彼-サツカレ-の1巻を読んだ感想

「殺彼-サツカレ-」はくらげバンチで連載されているweb漫画である。

殺彼 -サツカレ- | くらげバンチ

2018年3月9日に書籍版第1巻が発売された。黄色い表紙にピンクのタイトルが鮮やか。 

殺彼-サツカレ-(1) (バンチコミックス)

殺彼-サツカレ-(1) (バンチコミックス)

 

タイトル通り様々な殺人鬼の男が登場するが、1巻の時点では表紙の4人のみ。

  • 桐生優太

眉毛の太さが特徴的である。ガタイはいいが特に容姿に優れているわけではない、という印象付けだろうか。冴えない女をカモに金を巻き上げるだけ巻き上げ暴力をふるいまくる典型的なクズ男である。彼が普段のDVの延長からうっかり金づるをぶっ殺してしまったところから物語は始まる。前述の通りクズ男なのだが、他の面々と比べるとどうも一番まともに見えてくるのが…。いやDVはダメだよ。ダメだけど…でもさ…。まともとまともでないもの、正常と正常でないものの差なんて結局は比較でしか語れないのだなぁ、としみじみ思わせてくれる。うっかり殺人犯なので、自分の引き起こした事態に本気で動転している様が情けなく、まだ読者側の視点に近い。でもおまえ殺人犯だからな!? 「自分だけはまとも」みたいな顔してんじゃねぇぞ!?

  • 松本記知

「じるち」と読む。作者がhide好きなんだろうな。手前の左側に立ってる明らかにヤバイお兄さんである。態度だけ見れば天真爛漫であどけなく女性の保護欲を駆り立てるし、顔もよければカラダもいいのでホイホイ女というかエサが引っかかる。識字と記憶に問題があるようだが、「記知」というこの字面に何が伏線があるのだろうか。というか本名なのだろうか。同人版には書いてありますか? 売ってくれ…。いわゆるサツカレの顔ともいうべき男である。こいつがいるので物語が動く。優太だけなら「逮捕!! 1話巻!! ご愛読ありがとうございました!!」で終了である。

  • 竜崎豪

飲食店を営むカニバリズム男。もうこの時点で「まさか、客に出してる料理の肉は…」と想起させる存在感。「お客には」人肉は提供してないらしいよ。解体場は一緒らしいけど…。個人的に一番注目している殺人鬼である(「注目している殺人鬼」って言葉、この作品以外に使うことあんのかな…)。ところでこの単行本には「貴方は誰に殺されたい?」と書かれた帯が巻かれているが、いやいや誰にも殺されたくねえよ!? でも敢えて選ぶとしたら豪ちゃんかな!? こういう人多いと思う。ただ殺すだけでなく、いや殺さないでほしいんだけど、殺した後はちゃんと食べてくれるし、殺す直前に「ありがとう」って感謝してくれるし…。優太の項の繰り返しになるが、他の殺人鬼に比べて殺害対象に「愛」を感じる。あくまで比較してだけど。やっぱ殺さないで…。40歳だけど肌ツヤがいいのはやっぱり…そうなんですか…。

  • 和巳景楽

線が細く恐らく顔色も悪くひ弱な印象を与えてくるが目力が…目力が異様に強い…。「非処女は全員魔女」と何だか処女厨みたいなことを言っているが、たぶんその根っこは深い。松本と利害の一致から共に暮らしているそうだが、ほんとにそれだけか~? 正反対に見える二人だからこそ欠けた部分(分かりやすい部分で言えば松本には知性、和巳には腕力が足りないよね。そういうところから分かりにくい部分まで隅々)を補い合い、二人でやっと一人の殺人鬼というか「人間」になれている、というような印象を与える。殺人でしか自己を解放できないし表現できないという点では、松本と和巳の関係こそがサツカレの一つのメインテーマとなるのかも。いや分からんけど…。

 

殺人鬼同士の横の繋がりのストーリーと被害者視点のストーリーが交互に描写されるので、人によっては「間が悪い」と感じてしまうかもしれない。それは作者の実力とかそういう問題ではなく好みだよね。私は好きだけど。

作者は(大介+旭)氏で二人いるのだが、それぞれの個性が反発しあうこともなく、ちょうどいいバランスで随所に出ているのがこの作品の一番面白いところだなと感じる。何となく印象だけでいえば、優太と豪ちゃんは大介さん、松本と和巳は旭さんのキャラって感じがしますね。外れてたら恥ずかしいので突っ込まないで下さい…。

元々同人誌で展開されていた今作、未登場の殺人鬼がまだまだいっぱいいるようだ。他の人らも見てみたいので連載が続くといいな~。おわり。